嫌いな男 嫌いな女
待ち合わせ場所に着くと、すでに4人は到着していて、私より少しだけ遅れて巽がやってきた。
……自然と、由美子のとなりには明宏くん。私は大樹くん。そして沙知絵には。巽。そんなふうに組み合わせが決まった。
みんながはしゃぐ声とか、ジェットコースターで叫ぶ声とか、すごい遠くから聞こえてくるみたいだ。
隣の大樹くんの声にも、うまく反応できない。
ただ、幸い大樹くんは遊園地に夢中で気がついていないからよかった。
巽の隣にいる沙知絵の声と、巽の声だけが、すごく近い。
ふたりの会話が気になってしまう。
私を見ないで、仲よく並んで歩くふたりの姿ばかりが目につく。
あいつの私に見せたことのない笑顔で佐知子と話す巽に腹が立つ。
話してもムカつくばっかりのくせに、話さなかったら……もっと嫌なんだ。
くらりと軽く視界が回った。
……気分が重たいだけだって思ってたけど……もしかして、風邪、かもしれない。
ストレスのせいかな。昨日までなんともなかったのに。
雲ひとつない快晴だっていうのに、肌寒く感じるのは、風邪だったのか。
「次なに乗る?」
「あ、えーっと、なんでもいいよ!」
隣の大樹くんが笑顔で声をかけてきて、思わず笑顔で答えてしまった。
こんなときになんで、なんでもないふりをしてしまうんだろう。でも、ここまで来て帰るわけにもいかないし、この前も先に帰っちゃったし。
もし、素直に『ちょっとしんどい』って言えたら、かわいい女の子なら慌てふためく男の子に送ってもらったりするのかもしれないけど。あいにく私はかわいくはないし、そんなキャラでもないし。
時間を確認すると、すでに3時前。
あと数時間。この時間まで過ごせたんだから、なんとかなるだろう。
よし、と小さく気合を入れて、大樹くんの指さしたジェットコースターに並んだ。