嫌いな男 嫌いな女
「どーでもいいっつの」
「へー。そういやねーちゃん、なんかかっこいい男に連れられて帰ってきたけど」
「大樹だろ。知ってるよ、今日一緒にいたんだから」
ふーん、と面白くなさそうに呟いてから、「家入る?」と聞いた。
「いや、用事ねえし、帰るわ。お大事に」
「自分で言えばいいじゃん」
「いちいちうっせーな。もうゲーム貸さねえぞ」
「あ、うそうそ!」
ひらひらと手を振ってから自分の家の門を開ける。
ちらっと最後に美咲の部屋の窓を見て、中に入っていった。
……家に行くことに別に抵抗があるわけじゃない。おばさんらとも知り合いだし、隆太もいるし。正直、気にならないと言えば嘘になる。
ただ、俺達はずっとケンカしかしていなかった。
今更、ケンカ以外の話をするのもおかしいだろ。
心配して顔を見るとか、柄じゃなさすぎる。
そんなの、俺達じゃない。
俺はお前の怒っている顔か泣き顔しか知らねえんだなあ。
別に美咲のことを好きとか、そういうんじゃねえ。
だけど、心配になるし、気になる。
多分、俺が一番わからない女は美咲で、一番わかってる女も美咲なんだろう。
一緒にいたいとか思わない。だけど……だれか他の男と一緒にいるのはちょっと……いや、大分嫌だと、思う。
「なんだろな、この関係」
ぼそっと呟いた。