嫌いな男 嫌いな女




授業が終わって、沙知絵は用事があると言って急いで帰っていった。
由美子と一緒に駅に向かおうと思ったところで携帯がポケットの中で震える。

メールかな、と確認すれば、相手は大樹くん。


『今日は学校? もう風邪治った?』


短いけれど、優しい言葉に暖かな気持ちになる。
ありがとう、という内容を返すと、すぐに返事が届いた。


『そっか! よかった。じゃあ、今日って時間あるかな? ちょっと、会えないかな?』


メールの画面をみて思わず固まってしまう。
そんな私を見て、由美子が「どうしたの?」と声をかけてきた。


「これ、ふたりでって、ことかな」

「え? あー、そうじゃない? 私の方には明宏からなんも連絡来てないし」


やっぱり、そういう意味?
さすがにふたりで会うのって初めてなんだけど……。

なんだか、改まった感じがするんだけど……気のせいかな? もしかして、なんて考えて、なんて自意識過剰なんだと頭を左右に振る。


「告白されるんじゃない?」

「え!? いや、まさか……!」


だって、だってまだ3回しか会ってないし、ふたりきりで会ったこともないのに……!
しかも大樹くんだよ? 私なんかに……告白とか! まさか!


「えーでも、大樹くん結構本気だと思うけど。どうするの?」

「……え? え、そんなの、わかんない、まだ、3回しか会ってないし……」

「回数重ねたら好きになるってもんでもないでしょー。ま、私は……美咲が素直な気持ちなんだったらどっちでもいいけど」


素直な気持ち……か。
画面をもう一度見つめて、どう返事をしようか考える。

会うのが、怖い気がしてしまう。なんだか……答えを急かされているみたいで、怖い。
でも、断ることは、できない。

意を決して、短い返事をした。
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