嫌いな男 嫌いな女




「ごめん、遅れた!」


メールで決めた待ち合わせのカフェに、約束の時間の5分後に大樹くんが走って入ってきた。


「ううん、大丈夫だよ」


肩で息をしながら、私の向かいの席に腰を下ろす。
店の中にはあまり人がいなくて、店員さんがすぐに水を持ってやってきた。


「美咲ちゃんはもう頼んだ?」

「ううん、まだ、えーっと、アイスティー」

「じゃあ、それふたつ」


目を合わせて、ふふっと2人で微笑む。
やっぱり、なんだか大樹くんは暖かい雰囲気がある。

さっきまで緊張していたのに、顔を見ればそんな気持ちがキレイさっぱりなくなるんだもの。

なんで遅れたか、とか色んな話をしていると、テーブルにアイスティーが運ばれてきて、2人で砂糖もミルクもたっぷり入れてから口を付けた。

大樹くんも甘党なのかも。
……巽は、確か甘いモノが苦手だから、ブラックコーヒーとか飲みそう。
かっこつけるんだから、きっとそうだ。

今日呼び出された理由を聞くこともなく、ただ話をして時間を潰す。

なんでかな、とは思ったけど……もしかしてただお茶したかっただけなのかもしれない。
そりゃそうだよね、告白とか、やっぱりあるわけないよね。

そう思うとふっと肩の力も抜けて、会話が弾む。


やっぱり、すごく、話しやすい。
気を使うことなく話ができるし、楽しい。
大樹くんの笑顔を見ていると、すごく、安心する。


「でさ」

「ん?」

「俺と、付き合ってくれないかな」


油断していたから、思わずアイスティーを吹き出してしまいそうになった。
え!? このタイミングで!?

っていうか……え!?


「好き、なんだ」

「あ、え……え?」


告白、だよね、これ。
だけど目の前の大樹くんは、さっきまでの雰囲気のまま、にこにこと話を続けた。

えーっと、冗談、とかでもないよね……。
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