嫌いな男 嫌いな女
「じゃあ、やっぱり返事は待つよ」
「でも……」
「お願いだから、そうさせて」
こんな気持ちで、待たせるとか、できない。
そう言おうとしたけれど大樹くんに言葉を遮られた。
悲しそうに、だけど、私を安心させるように優しく微笑む大樹くんを見ると、それ以上はなにも言えない。
「ちゃんと、考えてみて」
巽のこと? それとも、大樹くんのこと?
無言で大樹くんを見つめていると、伝票を手にして立ち上がった。
「帰ろっか」
「……うん」
さっきまで笑って話していたのがウソみたいに、帰り道は言葉少なだった。
先に大樹くんが降りて、ひとり窓の外を見ながらぼんやりと過ごす。
……考えていたら、答えが出るのかな。
待ってるって、いつまで? 待ってもらって、無理だったらどうするの? 大樹くんなら、他の女の子からもきっと、モテるのに。
私は、その言葉に甘えてもいいの?
巽はきっと、今頃クラブ活動中だ。
いつも、何時までやっているんだろう……。
会いたい、な。
会ったら、少しくらいは、はっきり、するのかな。
告白されたんだ、私。巽の、友達に。
巽は……どんな反応するんだろう。いつもみたいに、憎らしいことを言ってくるのかな。