嫌いな男 嫌いな女
『遠くて近いおとなりさん』
■
ずっと、考えてたけど、やっぱり俺にはわかんなかった。
美咲が倒れてから、ずっと。美咲のことばかり考えている自分のことを。
大樹の言葉が、何度も何度も脳内でリピートされて、妙にイライラする。
もしかして、“好きなのか?”なんて考えても見たけど、なんかそれも違うような気がして。
だって美咲だぞ。
万が一好きだったとして、どこを好きになるっていうんだ。
あのガサツで、口の悪い女のことを。どこをどう見て好きになれるっていうんだよ。
昔からそばにいたから、気になってるのを勘違いしてんじゃねえかな、やっぱり。
「美咲ちゃん、元気になったって」
相変わらず美咲のことを考えていると、大樹が嬉しそうに俺に駆け寄ってくる。
なにがそんなに嬉しいんだ。
っていうか、毎日毎日美咲とメールしている話なんて聞きたくねえっつーの。
「どうでもいいよ」
舌打ち混じりにそう告げると、「なんだよ今日も機嫌わりいなあー」とぼやかれた。
でも、元気になったのか。
すげえ体調悪かったからただの風邪なのかわかんなかったけど、まあ、よかったんじゃねえの?
「お前、沙知絵ちゃんとはどうなの?」
「メールくらいしかしてねえけど」
遊園地の帰りにメール交換してから、1日に数回はメールがやってくる。
美咲の友達だし無視するのもな、と何回かに1回は返信してる。女ってほんと、どうでもいい内容を連絡してくるからめんどくせーんだよなあ……。
沙知絵が俺のことを気にしてるっていうのはわかってる。
本人に言われたわけじゃねえし、距離を取るのもなあってだけの関係。