嫌いな男 嫌いな女

「大樹? 結果報告?」

「いや、沙知絵。『連絡くれ』だってよ」


なんだ。
あいつにしちゃ短いメールだ。

すぐに着信ボタンを押すと、すぐに『はい!』と沙知絵の声が聞こえた。


「どした? なに?」

『あ、クラブ終わった? あ、あの、今から、会える?』

「……今から? どこで?」

『ごめん、実は今……校門にいるんだ』


もうそこにいるなら、断るわけにもいかねえな。
自己嫌悪にも陥ってるし、疲れてるしすぐに帰るつもりだったけど、少しなら、と返事をして電話を切った。

校門を出ると、すぐに沙知絵の姿が見えて、そこで明宏と別れる。


「ご、ごめんね、急に」

「いや、いいけど」


どうした? と聞くのはあまりに無神経な気がした。
……いつもはうるさいくらいの沙知絵が、今日はおとなしい。

手をもじもじさせて「え、と」をずっと繰り返している。


俺だってバカじゃない。
今まで何度か経験のあるシチュエーションに、沙知絵がなにを言おうとしているのかはすぐに分かる。


俺は、これを聞いてしまって、いいんだろうか。


「好き、です。付き合って、ください」


顔を真赤にして、俯きながらはっきりと言葉にした沙知絵を見て、ああ、すげえなあって思った。
同時に、なんで数回しか会ってねえのに、俺のこと好きなんだろうって。

なんでみんな、こんなに自分の気持ちに気づけるんだろう。

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