嫌いな男 嫌いな女

「……悪いけど……」


今までだったら、付き合っていただろうと思う。

彼女がいないときに告白されて、その子が可愛かったら、なんとなく付き合っていた。沙知絵はかわいいし、話やすいやつだし。

でも、今は、無理なんだ。
沙知絵が美咲の友達だっていうのもある。
だけど、友達じゃなくても、今は断っていただろう。

俺が言葉を選びながら断ると、沙知絵はゆっくりと顔を上げて俺を見つめる。

その顔は、ショックを受けているようじゃなかった。
そう言われるのを、わかっていたみたいな、真剣な顔。


「好きな人が、いる?」

「……そんなんじゃないけど」

「美咲が、好き?」


なんで周りの連中はみんなこぞって同じような台詞を口にするんだ。
答えが出てないっていうのに、なんでこう答えを急かすんだ。

いい加減面倒くさいんだけど。


「そんなんじゃ、ねえ」

「本当に?」


本当かどうかはわかんねえけど。
今はそれ以外に言葉が見つかんねーんだよ。


「もし巽くんが美咲を好きでも……美咲はそんな気がないみたいだから、いいんだけど……」


なんだそりゃ。

俺はどんな顔で佐知子を見たんだろう。
佐知子が俺を見て、唇をぎゅっと噛むのがわかった。


「好きじゃないけど、気になる?」

「……わかんねえよ」

「巽くんに告白するって言ったら、美咲は、応援してくれたよ」


なんなんだよ一体。
なんでそんなこといちいち俺に言ってくるんだよ。


「そんな顔してても、美咲のことが好きじゃないって、言い張るの?」

「……お前、俺を怒らせたいのか?」

「そんなつもりじゃないけど。なんで認めないのかなって思って」


認めない訳じゃない。
わからないんだって。
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