嫌いな男 嫌いな女
一通り話し終えたら駅まで一緒に帰って別れた。
あの沙知絵の勢いはすげえなあって感心するけど。いいんだろーか。
でもあれ以上言っても引かなかっただろうしなあ……。
でも、俺、ほんとに美咲が、好きなのか……。
なんか、人事みたいな気分なんだけど。
言わされた感が否めないけど、口にすると、こんなにストンと胸に落ちてくるもんなんだなあ。
ただ、どこが好きかって言われたら、やっぱりわかんねーんだけど。
実際嫌いなところしか思いつかねえ。
でも、好きだって思うんだから、よくわかんねえもんなんだな。
大体いつから好きだったんだろう。……さっぱりわかんねーや。
——『美咲は好きじゃないよ? 巽くんのこと』
自覚したところで……今更だけど。
大樹は、告白、したんだろうなあ……。
考えている間に駅に着いて、電車を降りて改札を出る。
そして、しばらく歩いて目の前に美咲が歩いているのに気がついた。
もう薄暗いっていうのに、なんで、わかるんだろう。
後ろを歩く俺の足音に気づいて美咲が振り返り、足を止める。
「こそこそついてこないでよ……怖いでしょ?」
「だれがお前なんかをつけるか、バカ」
これが俺たちの会話だ。
いつも通りの会話。
いつの間にか俺の隣には美咲がいて、ふたりで並んで歩く。
なんか、気恥ずかしい気持ちで、頭をかいた。
「なんだよ、今日は静かじゃねえか」
「巽こそ」
それだけ話すとまた無言になった。
今まで、大樹と一緒にいたんだろうな。
……なんて、返事をしたんだ? なんて、どうやって聞けばいいんだろう。
しばらく無言だったけれど、それに耐え切れなくなってくる。