嫌いな男 嫌いな女
まあ、このクラスに来るって決まったわけじゃない。それだけでとりあえずはいいか。
盛り上がってる女子たちを無視して自分の席にカバンを置く。
「明宏まだ時間あるし、4組のやつらもゲームに誘いに行こうぜ」
「待てよーその女子のこともっと教えろよー」
「教えることなんてなんもねえよ」
教室のドアのところで明宏を待っている間に、明宏が大声で叫ぶ。
教えるもなにも、一日目にケンカしてそれっきりだっつーの。
「ブスで、口が悪い、がさつな男みたいな女だよ」
「ぶはははは! ひでー」
「男みたいなくせに、スカートとか履いてんの。すげーきもか……っ……た」
明宏と同じように笑いながら廊下に一歩出て、……体が固まった。
目の前に、せんせーと並んで歩いていた美咲。
……明らかに、俺を睨んで、る。
ってことは、聞こえてた、ってことだよな……。
「山森もうチャイムなるぞー」
美咲の隣のせんせーが俺に声をかける。
俺の担任じゃないから、同じクラスじゃないらしい。
ただ、それにほっと出来る状況じゃあ、ねーよな……。
「あれ? せんせー隣の女子って転入生!? 巽の隣の家の?」
「あ、ああ、そうなのかー。じゃあ同じクラスじゃなくて残念だったなー」
「全然残念じゃありません」
せんせーの言葉に、美咲が間髪入れずに答えた。