嫌いな男 嫌いな女



放課後、大樹くんと会って、一緒に映画を見てから帰路につく。
駅までふたりで並んでいる間、大樹くんは無口だった。

……どうしたんだろう。

いつもはいろんなことを話しかけてくれるのに、今日は私の話も上の空だ。


「どうか、した?」


私、なんかしちゃっただろうか。
それとも体調が悪いとか?

おずおずと問いかけると、大樹くんはハッとした顔をしてから、口をパクパクさせる。

本当に、どうしちゃったんだろう。


「み、美咲ちゃん、あ、あの」

「え?」

「来月の連休、用事とか、ある?」


来月の連休って、3連休だっけ?
なんか予定あったかな? 今のところはないような気もするけど……。予備校は確か、なかったはず。


「親戚が、実は、隣の県で小さな民宿やっててさ、遊びに、来ないかって」

「へえーそうなんだ! 気分転換にいいかも。みんな誘うの?」


あ、もしかして巽を呼ぼうか考えているからかな。
言い出しにくかったのかもしれない。

……でも、確かに巽と沙知絵がいるっていうのは……どうなんだろう。


「いや、その」

「え? あ、もしかして日帰りで?」

「……いや、泊まりで」


もごもごと話す大樹くんをじっと見ていると、どんどん彼の言おうとしていることがわかってくる。
……もしかして?
え? まさか。


「ふたりで、行かない?」


顔を真赤にさせて、私をチラッと見た大樹くんと目が合うと、私の顔も赤く染まった。
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