嫌いな男 嫌いな女



「やっぱりこれじゃない!?」

「む、無理!」


沙知絵の差し出してきた真っ赤な下着を見て、ブンブンと顔を左右に振った。
赤い下着なんてまだ持ってないし、黒のレースがエロいし、なによりこれ……紐パンだし!


「こんなの引かれる! 絶対引かれる!」

「そんなことないんじゃない? 男だったら好きでしょ。もしくはこれ?」

「由美子もそんなの選ばないでよ!」


これがウワサのTバック!
手に取るのも恥ずかしくて、なんかもう色々恥ずかしい。

旅行まで一週間を切った。
両親には由美子の家に泊まることにして。なんかウソついてることに、ドキドキしているんだか、大樹くんとの旅行にドキドキしているのかわからない。

なんか、もうずーっと緊張している気がする。

そんな状態だっていうのに、2人に旅行だったら勝負下着買わないと!とここまで連れて来られてしまった。


「でも、ほんとにいるのかなあ……付き合ってまだ一ヶ月も経ってないのに……」

「もしもに備えるのが勝負下着よ」


そういうもんなの?
やたら張り切る2人について行けないんだけど。

あれから……大樹くんと改めて“恋人同士”になったけれど、キスもあれから一度もしてない。

手をつなぐくらいだし、それだけでもドキドキしっぱなしだっていうのに。そんなの想像できないんだけどなあ。

とはいえ、2人の言うこともなんとなくわかる気もするし、万が一旅行中、へろへろになったパンツとか見られたらと思うと、やっぱり買ったほうがいいんだろう。

盛り上がる2人を置いてひとりで店内をうろつきながら、一枚の下着を手にした。

薄いピンクの下着。
白いレースが前でリボンになっていて、ポイントに濃いピンクのレースも混ざっている。

……このくらいなら。
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