嫌いな男 嫌いな女
「どうせ、お前のことだから、ピンクとかでレースとかリボンのついた似合わないかわいらしーの買ったんだろ」
……なんで、そんなこと言うの。
「似合わないくせに」
なんで、そんなことばかり言うの。
私の気になったものを当てられた恥ずかしさと、それを否定された悔しさが、胸を締め付ける。
泣きたくないのに、なんでこんなにも泣けてきてしまうんだろう。
ぐっと唇を噛んで、泣くもんか、と心のなかで呟いた。
何度も何度も、巽に泣かされてたまるか。
「……悪かったわね。でもちゃんと大樹くんのことをかんがえて、喜んでくれそうなものを選んだから」
なんで、男にこんな台詞を言わなくちゃいけないんだ。
……しかも、巽に。
「へーやる気じゃん」
「そりゃ、巽もさっき言ったじゃない。それなりの覚悟だって期待だってしてるわよもちろん」
「は、なんだそりゃ」
「巽にとったら、恋人とお泊りなんて当たり前のことかもしれないけど、私には大問題なの。今までとっかえひっかえ彼女つくるような、そんな軽い恋愛をしてる訳じゃないの。どーせ佐知子とだってやってるんでしょ? あーそうか、沙知絵が選んだ下着は巽の趣味? 軽そうな巽が好きそうよね」
口が勝手に動いていく。
言っていることがめちゃくちゃなのはわかるけど、止められない。
「かわいい下着を用意したくもなるし、それをみてかわいいって言ってもらいたいの。巽には関係ないでしょどうでもいいでしょ、放っておいてよ」
「なんだそれ」
勢い任せで吐き出しているのを止めたのは、巽の低い声だった。
「だれが軽いって? ふざけんなよお前」
「……な、なに。真剣に沙知絵が好きだとか言うわけ?」
怖い、と思った。
巽の鋭い視線に恐怖を抱きながらも、必死に強がって、視線をそむける。