嫌いな男 嫌いな女

お茶を持って部屋に戻って、持っているDVDを流した。
ハリウッド映画。内容のないかっこいいだけのアクション映画。
それをボケっと見ていると、ふと沙知絵と目があった。

くすっと沙知絵が笑ったから。
なんとなくそれを合図のように、沙知絵を引き寄せて、キスをした。

沙知絵は、目をつむって俺を受け入れる。


多分俺はただ、欲求不満だったんだ。
だから、昨日美咲にあんなことをしてしまったんだ。きっと、そうなんだ。

だって俺はいま、自然に沙知絵を抱きしめている。

何度もキスを繰り返して、ゆっくりと横に倒れた。


……昨日は、倒れて美咲の上になったっけ。
美咲とのキスは、もっと固かった。今のように、柔らかくもなければ、温かくもなかった。

きっと、美咲は目を見開いて、俺のキスを受けていたんだろう。
俺には、美咲を見る余裕なんて全くなかったけど。


あんなに今日一日イライラしていたっていうのに、今は自分でも驚くほど冷静だ。

キスをすれば受け入れる。
体を触れば声が漏れる。
俺の行動になに一つ抵抗することなく、佐知子は俺に身をまかす。


昨日の俺はもっと強引だった。なにも考えられないくらい必死だった。
美咲はもっと硬直していたし、なにをしても無言のままだった。

受け入れることもなければ、抵抗することなく……ただ、泣いた。



一度思い出してしまうと、美咲の泣き顔が目の前をちらちら横切る。

忘れろ。消えろ。

佐知子の体からは少し化粧の匂いと香水の匂いがする。

美咲からはお風呂の匂いがした。
美咲は俺の首に手を回さなかった。

美咲は。美咲は——……。
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