嫌いな男 嫌いな女
言いたいのに、言えない自分。
言いたいのに、言いたくない自分。
怖いから、嫌われてるなら、潔く言って、嫌われる方がよかったはずだ。そのほうがスッキリしただろう。言わないまま傷つけて、もっと嫌われて。そのくせ、忘れられない自分。
無理してる分、余計に募る美咲への気持ち。
諦めようと思うだけで、自分の中でなにもせず周りに甘えるだけの自分。
言う覚悟も、言わない覚悟も、中途半端なままだ。
そのせいで関係のない、沙知絵までも傷つけた。
「でも、もう遅いんだ」
消えそうな声でつぶやくしかできなかった。
ほんと、俺はバカな子供だ。悔しくてしかたねえよ。自分がこんなに弱いなんて。
俺の言葉に、渚が頭を撫でてくる。ガキ扱いされていることに怒る気も起こらねえ。
偉そうに、とむかつきながらもそのまま手を払いのけることも出来ないくらい、弱っているんだって思った。
「あんたらはそればっかりね」
……あんた……ら?
「遅いってなに? だれが決めたの? 自分が決めつけてるだけでしょ。今まで失敗したんなら、失敗しない方法を選びなさいよ、自分のためにも。ああすればよかったこうすればよかったなんてね、何度言ったって戻らないんだからこれからのこと考えなさい」
姉貴ぶって、俺の頭をぽんぽんっと軽く叩いてから渚は部屋を出て行った。
……今まで失敗したこと。
言われてみると、ずーっと同じことの繰り返しだ。
これから……俺はどうしたい?
どうしたらいいか、なにをすればいいかは……もう、わかってる。
いや、ずっと前から、わかっていたんだ。
ただ、勇気がなくて逃げてただけ。