嫌いな男 嫌いな女
『見送りの一泊旅行』
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あの日から……気分は最悪のまま。
だけどいつまでもそうしているわけにいかない。
明らかに目を腫らせて学校に行ったときも、沙知絵も由美子も心配したけれど、どうしたのかは一度も口にしなかった。笑い続けて、聞く暇を与えないようにしていたっていうのもあるんだけど。
あれから巽の顔は一度も見ていない。
っていうか見たくもないし! 見なくていいし!
明日から大樹くんと旅行だっていうのに……また巽のこと考えてバカじゃないの私!
楽しみにしてたんだから! あんな奴のこともう忘れちゃえばいいんだ!
……あんな、クソ男なんて。
「明日、楽しんで来てね。おみやげよろしくね」
学校が終わって駅につくと、沙知絵がそう言ってバイトだと電車に乗り込んだ。
……最近、沙知絵も元気が無い気がするんだけど……どうしたんだろう。
話しかけるとニコニコしているから、聞かないほうがいいかな、と思っているんだけど、大丈夫かな。
人のこと、言えないけど。
巽となんかあった? なんて、聞けないし。……聞きたく、ない。
「なんて顔してんの」
「え? あ、いや。緊張してきちゃって」
ぽんっと由美子に肩を叩かれて顔を上げる。
……なにも言わないけど、なんだか由美子には見透かされているみたいに感じてしまって、うまく言えなくなってしまった。
「明日、よろしくね」
「お泊りのアリバイね。任せて」
アリバイ……か。なんか、そう聞くとすごい不安になってきた。
お母さんとお父さんにばれたらどうしよう……怒られるだろうなあー。
由美子と別れてから予備校に行って、とりあえず授業を受けるけれど、正直内容は全く頭に入ってこない。