嫌いな男 嫌いな女
紺色のちりめんに、端だけ空色のような柄に切り替わっている。ところどころにピンクの柄も入っていて、中は多分黒の水玉。
「どう? かわいいよね」
……確かに、かわいいと思う。
うん、かわいいよ。だけど……私は今この手に持っているモノのほうが、好きだ。
「それが気に入っているなら、それもかわいいけど」
なにも返事をしなかったことに不安をいだいたのか、取ってつけたような発言。
かわいいけど、私にはかわいすぎるって思ってるんでしょ? わかってるよ、そんなこと。
「ううん、ちょっと気になっただけだから」
「俺、買うよ?」
「いいよ、大丈夫。ありがとう」
どっちを買ってもらっても嬉しくない。
今更自分で買うっていうのも、気分が乗らなくなって、巾着を棚に戻した。
……別に、そんなに欲しかったわけじゃないし。
「部屋、戻ろうか」
にこっと笑ってそう言うと、大樹くんは安心したかのように笑って私の手をとった。
大樹くんと、泊まる夜。
緊張のせいで、私こんなにおかしいんだ。きっとそうだ。
なんだか、顔の筋肉も、おかしくなってきた気がする。
多分、ずっと笑っていたからだ。いっぱい笑って話したからだ。
「お風呂、行こうか」
「……うん」
緊張と、戸惑いを混ぜて返事をしながらお互いにお風呂に入る準備を始めた。
この前かったばかりの下着に手をのばすと、胸がぎゅうっと傷んで苦しくなる。
こんな気持ちも、お風呂に入れば、きっとすっきりするはずだ。