嫌いな男 嫌いな女
ぎゅっと下着を握りつぶすと、隣の紙袋が私の目に入った。
……巽に渡された、紙袋。
ラフィアのリボンはもうグチャグチャになって、かろうじて引っかかっているだけになっている。紙袋がぼろぼろなのは……はじめからだけど。
これ、なんだったんだろう……。
手に、しないほうがいい。
まだ、見ないふりをしたほうがいい。こんなタイミングで、見るべきものじゃない。
なのに、震える手がそれに伸びていって、紙袋を掴んだ。
リボンを解いて、中を見ると小さな缶が入っている。
やっぱり、これは……あの雑貨屋の缶だ。なんで、あの店のものを? 今はもう、なくなっているのに。どうしてこんなものを巽が持っていたんだろう。
ゆっくりと缶の蓋をあける。
中には、イチゴのネックレスが、ころんと転がっていた。
袋の中には、入れっぱなしになっていたんだろうレシートも入っていて、それを見れば、これを巽がいつ、買ったのかがしっかりと記されていた。
このネックレスは、覚えている。
かわいいと思っていた。あの日、私はあの店でこれを見かけた。ほしいと思ったけど……高かったし、似合わないからって諦めたままのもの。
その後、いつみたのかは覚えていないけれど、ネックレスはなくなっていた。
覚えている、これを見たのがいつだったのか。
この日、私がなにをしたのか、忘れることは、一度だってなかった。
3年前の、誕生日だ。
中学3年になった年の、私の誕生日。
巽が私の部屋にやってきて、巽と、キスをした日。