嫌いな男 嫌いな女
なんで、なんでこんなものを。
なんでこの日にこんなものを買っていたの?
なんで、今更これを私に渡すの?
“行くな”と言った巽の顔が、頭にこびりついて離れない。
握られた腕が、まだ、熱い。
……巽は、どうしてこれを選んだの?
いつも、いつも……私に文句を言うくせに。
少女趣味だとか似合わないだとか、散々言って私を傷つけるのに。
私のためにこれを選んで、買ってくれたの?
私がこれを欲しがるってわかってたの?
似合わないのをわかりながらも、これを選んでくれたの?
あの日にこれを渡しに、部屋に来たの?
「美咲ちゃん?」
大樹くんの呼びかけに、涙をぼとぼとと零しながら振り返った。
「ごめ、ん、なさい」
「……美咲ちゃん?」
「ごめんなさい、ごめん、なさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
どうしても、巽を嫌いになれない。
どうしても、巽のことを忘れられない。
ごめんなさい。
大切だったのに、大切にしてくれたのに。ごめんなさい。
どうしても、巽が、好きなんだ。
どうしたらいいのかわからないくらい、好きなの。巽が。
巽だけが。