嫌いな男 嫌いな女
「お前らにつきあってらんねーよ」
じろっと睨まれたけれど、さっきまでの冷たい感じはなかった。
ちょっと諦めのような……、そんな顔だ。
っていうか、お前らってなに? だれとだれのこと指しているんだよ。
「昨日、振られたから、もう好きにしたら?」
「は!? なんで」
「うるさいなあーもうさっきから! ちょっとは自分で考えろよ。ほんっと、ふたりして素直になんねえんだから。やってらんねーよバカバカしい」
同じようなことを、沙知絵にも言われたっけ。
え? でも、それって、どういうこと?
ぽかんとする俺を置いて、大樹が腰を上げる。手をひらひらと振って教室から出て行くのを眺めていた。
「後は自分で考えな」
なにもかもお見通しのように、明宏が俺の肩に手を添えて腰を上げる。
そしてそばの机や椅子を元に戻していく。
……考えるって言われても。なにを?
いや、ほんとはちょっとわかってるんだけど、まさか、のほうが大きい。
だって、それって、美咲も……俺のことを、とか? まさか。いやいやありえねえだろ。だって俺のほうが拒否されてんだぞ?
でも、もしも。
ありえないもしもの場合ばかりが浮かんでくる。
うぬぼれじゃねえか? 自意識過剰なんじゃねえか? っていうか俺の希望がそういうふうに思わせているだけじゃねえの?
でも、俺は……美咲にちゃんと、本当にちゃんとした気持ちを口にしてない。
そして、美咲からも……聞いてない。
俺が最後にちゃんと言葉にすればなにかが変わるんだろうか。
ただ美咲と大樹がどういう状況かわからない今では、逆に苦しめてしまいそうなそんな気もする。
もう、泣かせたくねえのに。