嫌いな男 嫌いな女



1日、ぼんやりと過ごしていた気がする。
大樹とも、あんまり話もしないままだった。といっても無視されているとかケンカしているっていう感じでもない。

なんかそっとしておいてくれという感じだった。

……なんだか、なあ。
もう考えすぎて頭の中がパンクしそうなんだけど。


「たーいま」


家に帰って玄関で靴を脱ぎ捨てて階段を上る。リビングでおかんが返事をしていたけれど、さほど気にする様子もなかったからなにも言わずに自分の部屋に入った。

ケンカして腫れた口元を見られたらうるさいだろうし。


あーもう、どーすっかな。

上着を脱いでベッドに放り投げてからどさりと腰を下ろした。
美咲はもう、帰ってきてんのかな。

手をついて背筋を伸ばしながら天井を仰ぐ。


「おかえり」

「おー……」


聞こえてきた声に適当に返事をして……窓の方を見た。

窓を開けて、腰掛ける美咲が、俺を見て気まずそうな顔をしている。

っていうか、なにしてんのお前。
なんで部屋にいるんだ、しかも勝手に入ってきてんじゃねえか。


「……な、に」

「えと、ちょっと……話が。っていうかなにその顔」

「ああ、これは、ちょっと。っていうかそんなことどうでもいいんだよ」


いつからいたんだ。
玄関に靴とか……なかったと思うし、おかんもなにも言ってなかった。
美咲が来てたら絶対なんか言ってるだろう。

ってことは。


「窓から、来たのかお前」

「え? あ、うん。鍵空いてたし」


空いてたし、じゃねえよ!


「なに考えてんだよお前! 窓からくんなって何度も言ってんだろ! 玄関から入れよ!
ほんっと、がさつな女だなお前」


勢い任せにそう言ってから、静寂が落ちてくる。

……あー……。
自分の言動の変わらなさに、気づいてゆっくりと美咲の方をみると……むっつりと怒った顔で俺を見ていた。
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