嫌いな男 嫌いな女
「ほんとに……巽も相変わらずよね」
刺々しい。
さっきまで、ちゃんと言わねえとなあとか、好きだとか思ってたんだけど、なんだこの相変わらずな感じ。気持ちも萎えるっつーの。
いや俺が悪いんですけど。
っていうかこいつが俺を好きとかマジでありえんの? こんな顔して俺見てくるけど。やっぱり沙知絵も大樹も勘違いしてんじゃねえかな。
「……お前が、窓から入ってくるからだろ」
「隣にあるんだからいいじゃない」
「そういうところががさつなんだっつの。女だろお前」
「女らしくとかうるさいなあ、もう。お母さんみたい」
うわーほんっとムカつくなお前!
なんなのお前! お前が悪いんだろ! 窓から屋根飛び越えて来る奴がいるかよ! 俺だってこんなこと言いたかねえよ!
イライラしながら美咲を見ると、ふいっと拗ねたように顔を背けた。
その美咲の首元に、キラっとなにかが光る。
赤い、なにか。
いちごの形の……ネックレス。
俺が、渡したネックレスだ。
「お前、それ」
俺が美咲を指さすと、慌てて首もとをぎゅっと隠すように掴んで、真っ赤に染まった。それこそイチゴみたいに真っ赤に。
なんで、それをつけてんの?
それをつけて、なんで俺の部屋に、俺に会いに来てんの?
「なんで?」
「……なんのこと」
真っ赤な顔をしたまま知らんぷりする美咲に一歩近づく。
美咲は俺を見たけれど、逃げようとはしなかった。イチゴの顔のまま俺を見つめる。
一歩ずつ近づくと、すぐに美咲の目の前にたどり着いて、ゆっくりと美咲の手を握った。そして、それを首元からはがしていく。