嫌いな男 嫌いな女
「座れば?」
心なし、巽の顔も赤い気がする。
こんな顔、するなんて。初めて見た。
なんだか、今まで何度も話したのに、初めて話すみたいに緊張してくるんだけど……。
とりあえず、小さなテーブルの前に腰を下ろして、巽が頭をポリポリとかくのを眺める。困ってるんだろう。もしかして……私と同じような気持ちだったりするのかな。
だったら、嬉しい、な。
「……そういや、さっきなに投げたんだよ」
「え? あ」
部屋の中に転がっていた紙袋を、巽が手に取る。
そういえば渡そうと思っていたのに……恥ずかしすぎて思わず投げちゃったんだっけ?
「えと、プレゼント……」
「だれの?」
そんなの、わかるでしょ。
言うのは恥ずかしいんだけど……。
「巽へ、の」
ぼそぼそとそう告げると、巽はばかみたいな顔で私を見つめてきた。
なにその顔。ぶっさいく。
「う、わ、マジで?」
そして頬が緩んでいって、巽はそれを隠すように自分の手で口元を抑えた。
「やべ、嬉しい」
……反則だと思う。
今までそんな素直なこと、言ってくれたことないじゃない。そんな顔して、そんな台詞なんて……!
嬉しさと恥ずかしさで、なんかよくわかんないけど胸がバックバクに鳴り出して苦しくなってくるじゃない!