嫌いな男 嫌いな女
「お前は、どうしたいの?」
「わかってたら決めてるってば!」
うるさいうるさいバカバカバカバカ。
「だから泣くなって」
「私だって泣きたくないわよ」
悔しすぎて涙がでる。
言葉に出来ない気持ちが涙になって溢れてしまう。
必死に堪えているのに、全然止まってくれなくて、巽はうんざりしたようにため息をついた。
「嫌い」
嫌いだこんなバカな男。
優しくもないし無神経だし、なんかもう全部イヤ!
彼氏ってなんなの一体! 思いを伝えたら終わりかこのやろう!
「まあまあ、もういいから」
「なんにもよくない」
「とりあえず座れって、な?」
私の肩をぐっと下に押して、私を無理やり座らせる。
しぶしぶ座り込んで、垂れてくる鼻水をずずっとすする。
巽は傍にあったティッシュを手にして数枚引き取ると、「ほら」と私の鼻をぐいっと押しつぶした。
「ぶ!」
「きったねえなあー、はい」
乱暴に私の鼻水を拭きとってから、頭にぽんっと手を添えてから、ベッドに腰掛ける。
「で? お前はなんで悩んでんの? 行きたい大学決めたんじゃねえの?」
「決めたけど、決まらない」
「なんじゃそれ。俺は東京に行くよ。お前はどうすんのかって」
「わかんないんだってば!」
「お前がなにを怒ってるのか俺には全くわかんねーよ」
認めやがったこの男!!!
わかってたけど! そんなこと知ってたけどー!
「お前は俺に『来て欲しい』って言われたいの?」
真顔でそう問われて、怒りがすっと冷めていく。
巽に……私はそう言われたい? 言われてどうするの?
「わかんない」
「俺がこいって行ったらお前は来るのか?」
わかんない。