嫌いな男 嫌いな女



外はいつの間にか、冷たい空気に包まれていて1年の終わりを感じ始める。もうそろそろ卒業か……って。

つまりまあ、簡単にいえば、美咲ともしばらくお別れかーって。

暖房の効いた部屋の中でつまらない映画をぼーっと見ていると、隣からすうすうと気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。

……お前がこの映画見たいって言ったのに、なに寝てんだこいつ。

俺の部屋で、最近DVDになった映画を見ようと勝手に借りてきて部屋に来たのもこいつ。恋愛映画に興味ないっていうのに。まだ1時間しか見てねえのになに寝てやがる。


「おい」

「んー」


呼びかけるとめんどくさそうに眉間に皺を寄せて、もたれかかっていたベットの方に体を向けて、再び眠りにつく。

ほんっと、……俺の気もしらねえで、この鈍感女が。


でも、こういう日々ももう終わりか、と思うとさすがになんか、惜しくなってくる。

俺は東京の大学に無事決まって、美咲は希望の私大に受かって、のんびり過ごす日々。同じ大学に大樹と明宏と由美子もいるらしいから、なんかすげー面白くない気もするけど。

こんなふうに美咲が家に来ることももうなくなるんだろう。
連休になるまで美咲は俺のところに来れないだろうし、俺だって帰れない。

つまり。
それまで我慢の日々ってわけで……。18歳にもなる健康な少年が、なんでこう我慢しなきゃなんねーんだ。

ああ、なんかイライラしてきた。
なにも知らねえで無防備に寝てる美咲に腹が立つ。

……今、家に渚はいないんだっけ。おかんも、パートだ。
つまり、家には俺と美咲だけ。


しばらく美咲の寝顔を見ながらぼんやりと考えてみる。今まではさすがに家でっていうのは、避けていた。いつ渚が帰ってくるかもわかんねーし、ここまでそばで美咲と過ごしていると、なんか、こう、ムードってもんがねえし。

ムードってよくわかんねーけど。
そもそも美咲もなーんも考えない顔して俺の部屋に来るし。


もう、いいんじゃね?
寝てる間に襲っちまえば、なんかそれっぽくなったりするんじゃねえの?
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