嫌いな男 嫌いな女

ぐいっと美咲を引き寄せて、俺の腕の中に収めた。
美咲は抵抗をせずに、俺の中でおとなしくし続ける。


もうすぐ、こんな簡単に会えなくなるんだよなあ……。


しみじみとそんなことを思うと、やっぱりこのままやっちゃいたいなーって思ってくるけど、さすがに我慢するか。


「東京、家決まったんだっけ?」

「おう」

「いつ行くの?」

「再来月の頭。卒業式にまたかえってくる」


そっかあ、と小さく呟いてから、美咲はなにも言わなくなった。

でも、一年前を思い出したら、こんなふうに抱き合っていることもキセキみたいなことだもんな。美咲と付き合っているっていうのもそうとう奇跡だけど。

……これまでの時間を思えば、半年くらいまあ、仕方ねえか。


「あ」

「なに?」


そうだよ、よく考えりゃそうだよな。
パッと閃いて、声を上げると、美咲が俺を見上げる。


「俺が引っ越ししてからお前速攻で東京来ればいいんじゃねえの? そしたらやれるじゃねえか」


そうだよ、引っ越ししてからは少し時間があるし、こいつにだってあるはずだ。その間にやればいいじゃん。来ればいいじゃん。

泊まりする時間もあるしだれもいねえし。

「な」と満足気に微笑むと、美咲が驚いた顔をして、次第に不機嫌な顔になっていく。


「あんったほんとにそれしか頭にないの!? なんなのそれ!」

「はあ!? なんだよなにが悪いんだよ! 別にいいだろ!」

「悪い! 悪いところしかない! っていうかあんたやりたいだけなんじゃないの! なんなの離れるとか言って、やれないのが寂しいだけなんじゃないの!」

「まあ、そうだけど」

「死ね! クズ!」

「なんでそこまで言われねえといけねえんだよ! お前だって東京来るって言っただろ」

「言ったけど! そういうことじゃないでしょ」


いみわかんねーよ!
美咲は俺の体をどんっと突き飛ばしてすっくと立ち上がった。
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