嫌いな男 嫌いな女

だってわからないでしょうこの気持ち。と言いたげな表情をして裕美子を見つめると、わかりたくないわと言いたげな表情で由美子は文句を続ける。


「いーかげんにしなさいよークラス別れたならいいじゃない。これから3年間そんな表情で過ごすの? 友達やめるわよ?」

「だってぇぇぇぇぇ!!!」


クラスが隣なのも嫌なんだけど……それよりもなによりあんな場所で大声を張り上げて、ガキのケンカを繰り広げたなんて。


新しい生活が始まるのに。

中学生だっていうのに……。初日からみんなのいる前で大げんかしてしまうなんて。冷静になってみれば恥ずかしくて仕方ない。

ほんのちょっぴり、恋とかだって期待してたのに。その期待や夢を自分で自ら放り投げてしまった気がする。

そんなことを考えると、体育館で前に座っていた男の子を思い出した。

あの子はどんな顔をして私たちのケンカを見ていたんだろう。
ああああああなんでケンカなんかしちゃったんだ私!


「あいつがいるから悪いんだー」

「美咲も短気よねえー。負けず嫌いなのかな」


わかってるけど人のせいにしないとやってられない。机の上でうなだれながら落ち込む気持ちを口に出して続けた。


「しかもこの教室だし……」

「ほんと、見事に隔離されてるよねーここ」


さすがにこの台詞には由美子も同意してくれた。

クラスが隣っていうだけでも最悪だっていうのに、全6組のこの学年。その中でなぜか私のこの5組と巽のいる6組だけが他の組のある階から離れてしまっている。

最悪だ……。クラスを離すのならば階も離して欲しかった。
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