嫌いな男 嫌いな女
クラスのみんなの視線も私に集まってきて、慌てて席を立った。
「な、なに?」
本当なら無視したいけど、わざわざ呼ばれると行かないわけにはいかない。意味分かんないけど。
近づいて巽の前で立ち止まると、突然男の子の顔を私に近づけた。
「な、なんなの!?」
「お前大丈夫か!? 美咲だぞ? この顔だぞ? このブスがかわいいわけ無いだろう!?」
驚く私と男の子を無視するようにそう叫ん。
……おい。ちょっと待てお前。
呼ばれてわざわざ来てみたら、ケンカを売りに来たのかこのバカは……。
あまりにも想像していなかった展開に、怒りもあるのに呆然とするしかなかった。
私が黙っているのをいいことに巽は私を罵倒し続ける。
ブスだとか男女だとか。いつものことだ。男の子が途中でなにか言っていたけれどそれでも構わずに何度も何度も同じ言葉を繰り返した。
ずっと、男の子に向かって。
私の顔を一切見ることはない。
「出てけーーーーーー!!!!!! ドチビ!!!!!!」
力の限り叫んで、ドン、と巽を突き飛ばしそのままドアをピシャリと閉めた。
マジでなにしに来たんだ! ふざけないでよ本当に……!
叫んだだけで息が切れてしまうほど、怒りがこみ上げてきて、無意味に泣きたい気持ちになる。
バカ、バカバカバカ。アホ。アホアホアホ。巽のアホ。
「まあ、そりゃそうなるわな」
ドアの向こうから、男の子の呆れたような声が聞こえてきた。
いつも一緒にいる男の声だ。
まだ巽もドアの前にいるんだろう。さっさと自分の教室に帰れ!
「お前! ほら! 美咲はあんな女だぞ!? っていうか女なのか!? でも男でもない! そう、怪物だぞ!? 根性の腐った野獣だ!」
「うっさいって言ってんでしょうが! あんたけんか売りに来たの!? どんなけ暇で どんなけ性格曲がってんのよ! このドチビ!」
我慢できなくなってドアを再び開けて怒鳴り散らした。
怪物ってなんだ!