嫌いな男 嫌いな女
『幼なじみのカンケイ』
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長袖から半袖になって、あっという間に夏休み。
くっそうるさいセミの声にイライラしながら俺らは体育館の回りを走っていた。
あーあちい。
あと何周走ったらいいんだっけ? 暑すぎて脳みそまで溶けそうだ。
「お疲れー」
結局何周走ったのかわからないままラストを向かえて、地面にへばりつく俺にマネージャーが声をかけてきてくれた。
肩甲骨くらいまである長い髪の毛を一つにまとめて揺らしている。
暑いと長い髪の毛見るのも嫌になるけど、マネージャーを見ていると涼しいと思うくらいだ。
悩んだ末に、クラブ活動はバスケにした。
特別興味があったわけではないけれど、明宏が入るっていうのと、マネージャーが可愛かったっていうだけ。
校内で1番じゃないかってくらいかわいい。テレビで見るアイドルよりよっぽどかわいいと思う。
かわいいんだけど、キレイでもあって。クラスの女子みたいに、ぶりっこしてる感じもねえし、うるさくもねえ。
豪快に笑うし、結構サバサバした性格。
長い髪の毛はさらっさらで、すっげー似合ってる。初めて見たときすげえ!って思った。
俺の知ってる女と全然違うんだもんな。
っていうか好みのどまんなか。俺はこういう女が好きなんだよ。美咲みたいながさつな女なんかとは比べるのも嫌になるくらいだ。
「少し休んだら次は体育館の中でパスの練習だよー」
「へーい」
うんざりした俺の返事に、マネージャーはクスクスと笑った。
「あれ? 山森くん、怪我してない?」
「え? あ、ああ。さっきちょっと」
マネージャーに言われて自分の手を見る。
そういえばちょっと前にパスを受け取ろうとしてバランス崩して壁に激突したんだった。明宏のノーコンで。