嫌いな男 嫌いな女
「消毒しとく?」
「いや、いいっすよこんなの」
「はいはい、こっちきて」
俺の意見を無視してマネージャーが俺を手招きした。
なんか、すげえ恥ずかしいんだけど。でもマネージャーに拒否もできねえし。
めんどくさそうなふりをしてマネージャーの指差したベンチに座る。
「……山森くん、身長伸びそうだね」
「まじっすか?」
手に消毒液が塗られる。
そしてマネージャーがしみじみとそんなことを言った。
自慢じゃないけどまだ俺の身長は低いままだ。
まあ、だいぶ伸びたほうだけど。男子の中では真ん中くらい。まだ女子のほうが俺より高い奴が多い。
美咲にだって負けたままだ。
明宏みたいに身長高ければなあ。あいつの場合はおじさんとおばさんも背が高いからな。クラスで一番でかいし。悠斗も明宏ほどじゃないにしても、俺よりかは高い。
「ほら、手が大きいから。高校生になったらきっと大きくなるよ。卒業する頃には今よりずっと大きくなってると思うよ」
俺の手と自分の手を重ねて、「ね?」と微笑むこの天使はなんなんだ。
赤くなってしまいそうな顔を見られないように、「あざっす」と言ってちょっと視線を逸らした。
「なーに赤くなってんだよー」
「うるせ!」
明宏の元に戻ると、案の定からかわれる。
俺がマネージャーのことを気にしてるのがこいつにはまるわかりなんだろう。
……自分ではよくわかんねーんだけど。
いや、かわいいな〜って思うし、すげえドキドキするときもあるし。話しかけられるのも嬉しいし。
他の女子と話すのなんて面倒でしかたねえけど。マネージャーだけは別。
だから余計に、こうやってからかってくるんだろう。