嫌いな男 嫌いな女
告白したって、うまくいかないだろうなって思ってしまっているのも事実だ。かわいいって言ってくれたのだって、ただ優しいだけだっていうのもわかってるんだもん。
……巽にあんなに言われなくたって。
だからこそ、告白することを躊躇ってしまう。
告白せずにチョコレートだけ渡すってことも可能だけれど……それって意味があるのかなあーなんて思っちゃうし。
「とりあえず買っておいて、ぎりぎりまで悩めば? いいのなくなるよー」
「そうしようかな……。由美子は? だれかにあげるの?」
「さーねー」
「えーなにそれ! 意味深!」
にやりと笑った由美子をみて、だれかに渡すことはすぐにわかる。
由美子ってば、本当に自分のそういう話しないんだからー。
……でも、ことが終わったあとでも、いつも話してくれる。
いつものことだから、まあいいか。
でも、由美子に気になる人がいるなんて。どんな人なんだろう。小学校のとき、塾の先生が好きだったと、あとから聞いたから、今回も年上の人なのかなー。
「そういえば、だれかが巽くんに渡すって言ってたよ」
「はー? 物好きな人もいるんだね。信じられない。どうせろくなお返しもしないよあいつ」
「そういえば美咲は巽くんにはどーしてんの?」
「……お母さんが勝手に用意してたから、おばさんに渡してたけど。今年は流石に断った」
ギリでもあげたくない。今までろくにお返しもらったことないし。
ありがとうとも言われたことない。まあ、あいつが言うわけないってのもわかってるけど。
「そういえば、マネージャーとはどうなってるんだろうねー」
「知らないけど、どーせ無理だよ巽なんか。相手にされるわけないし」
すごくかわいい人だった。
ウワサによれば3年生で、もうマネージャーじゃないらしいけど。
どっちにしたってあんなかわいい人が、巽なんかとどーにかなるわけがない。