嫌いな男 嫌いな女
「服装とかカジュアルなのに、小物はかわいいのが好きよね。スカートも滅多に履かないのに」
「服は似合わないってわかってるからなあーちょっと恥ずかしいし。小物だったら似合う似合わないってあんまりないでしょ」
髪の毛はまだショートカットだし、履きなれてないとスカートも恥ずかしい。性格だって、悔しいけれど巽の言うようにがさつなのだってわかってる。
だけど……やっぱりかわいいものはかわいい。好きなモノは好きなんだもの。
似合わなくっても。
「似合うと思うのになあ。財布だけなんてもったいない。小物だけじゃなくってかわいくしていけばみんな驚かないと思うけど」
「やだよー。恥ずかしい。あ、五千円入ってる」
「美咲お金持ち! お小遣い日?」
「いや、お母さんが、チョコレート買うって言ったらくれたー」
実は、“ちゃんと巽くんの分も買ってくるのよ”って言われたけど、それは黙っておこう。だって買わないし。
でも帰ったら聞かれるだろうなあ。ちゃんと買ったのか確かめられるかも……。自分の分として買ってごまかそうかな。
「あ」
レジに並んでチョコレートを買ってきた由美子が、不意に言葉を発した。
どうしたのかと、由美子の視線の先を見てみると、知っている女の人がひとり。
……バスケ部のマネージャーだ。
かごいっぱいに小さなチョコレートが入っている。
……きっと、いや、どうみても義理チョコだ。
あのなかには巽の分も入っているんだろうな。残念だね、本命チョコじゃなくて。
期待してたら、がっかりするんだろうな。だから言ったのに。あんなかわいい人が辰巳のこと好きになるはずなんてないもの。年上だし。
「気になる?」
「……なんでよ。あ、あのチョコかわいい」
じいっとマネージャーを見つめていると、由美子がこそっと耳打ちしてきて話をそらす用に別の店に近づいた。
由美子が後ろで「意地っ張りー」と言っていたけど、聞こえないふり。