嫌いな男 嫌いな女
「隣に越してきた美咲ちゃんと隆太くんだって。渚仲よくしてあげてね」
「へー。初めまして。渚ですー中学だから、一緒の学校には通えないけど、よろしくね」
「よ、よろしく」
にっと笑ってくれたその顔は、とてもお姉さんっぽくてかっこよかった。
お姉ちゃん、欲しかったんだよね、私。
しかもこんなかっこよくてきれいなお姉ちゃんとかいたらいいのになあ。
「巽は?」
「え? 知らないーさっき庭にいたような気もするけど」
巽っていうのが、同い年の子かな。
名前は男の子っぽいけど……どっちだろう。女の子だったらいいなあと思うけど、男の子でも、仲よくできたらいいなあ。
「なにやってるのあの子はほんとに! 巽! 巽ー!!」
困った顔でさっき以上の大声で名前を呼ぶと、ひょこっと庭からひとりの男の子が顔を出してきた。
……どろんこの姿で。
「なにしてんの! そんな格好で!」
「庭でケチャと遊んでただけだろー」
ケチャ? なんだろそれ。
首を傾げると、隣の渚ちゃんが「飼ってる犬だよ。ケチャっていう名前のパグ」と教えてくれた。
パグってあの、顔がぶちゃって潰れてる犬だっけ。
でもすっごくかわいいやつ。だったはず。
へえ、と思っているとおばさんに怒られている男の子、巽くんが私の方を見てぱちんと視線がぶつかった。
「だれ?」
「巽と同い年だって。仲よくしてあげなね」
私に聞いてきたのだろうけれど、代わりに渚ちゃんがそう答えて、慌てて頭を下げた。
「あ、よ、よろしく」
「なんでお前スカート履いてんの? 気持ちわりー」
……は?
頭を下げた状態で固まる私に、隆太が吹き出したのが聞こえた。