嫌いな男 嫌いな女
確かに気にならないわけじゃない。
ムカつく男が好きな人とうまくいくなんて、気に入らないから。それだけ。
だけど説明したら、由美子は違う意味でからかってきそうなんだもん。そんなんじゃないのに。そんなことあるわけはないのに。だってあのチビの巽なんだから。
逃げるように見に行った店だけれど、本当にかわいいチョコが並んでいた。
ハートの小さなチョコレートが小さな箱に敷き詰められている。値段もまあ、手が出ないほどでもない。
「これに、しようかなあ」
「いいじゃん、かわいい」
ハート型っていうのが恥ずかしいんだけど……いいかなあ。
箱を開けないとわかんないし。
まだ渡せるかわからないけど、悠斗くんに渡すなら、これがいいな。
しばらく考えてから、やっぱり、とその箱を手にした。
お金を払って、かわいい袋に入れて渡されると、妙にドキドキして落ち着かなくなる。ああ、買っちゃったんだなあ。渡すのかな。渡せるかな。
……受け取ってくれるかな……。
顔が赤くなってくるのが自分でわかって、どうしていいのかわからなくなる。
由美子を見ると、「頑張れ」と優しく微笑んでくれた。
残りは……隆太とお父さん。
また由美子とウロウロしながら、お酒の入っているチョコレートを手にして、それに決める。由美子も同じものを買って、お父さんに渡すんだと言った。
そして隆太のチョコレート。
かわいいお菓子の詰め合わせを売っている店に、くまの形のチョコレートが箱に入っていて、迷わずそれに決めた。
「これ買ったら終わり?」
「終わり! お腹すいたー」
終わったらファーストフードに行こうと言って、列に並ぶ。
目の前にはかごにたくさんのチョコレートを入れて並んでいる女の人がふたり。
……会社の人に渡すのかな。
お父さんもいっぱい持って帰ってくるもんね。