嫌いな男 嫌いな女
「よ」
「……なに?」
ああ、この憎たらしい顔!! やだやだこんな女!!!
俺がわざわざここまでやってきたんだから、少しはかわいい態度でもできねえかな。
そんな美咲も気持ち悪いけど。
「……ん」
口を開くとケンカになることくらい俺だって学んでる。
だから無言で紙袋を渡した。美咲がいつもどおりだからか、緊張はいつのまにかなくなっている。それに関してだけはお前のブサイクな顔にも感謝してやろう。
「……なにこれ」
生マシュマロです。
ただ、うまく返事ができない。
美咲は俺の返事がないことを気にすること無く紙袋の中に手を入れた。
どんな反応かなんか怖くなって、顔を隠すように目をそらして道に見える街灯をぼんやりと眺める。
けれど、美咲はずっと黙ったまま。
もう中身がなにかってことくらいはわかってるはずなのに。
……いや、せめてお礼言えよお前。
買うのはクソ恥ずかしかったし、結構高かったんだからな。
怪訝な顔をして美咲の方に振り返る。
けれど……美咲の顔を見ると思わず息が止まってしまった。
なんだ、その顔。
俺の渡した生マシュマロの入った箱を眺めながら、美咲は呆然としている。
今まで見たことのない顔で。まるで箱の中にあるピンク色のマシュマロみたいな、そんな色の顔して。
なにも言えないまま、恥ずかしい気持ちになって頭をかきながら目をそらした。