嫌いな男 嫌いな女
「……なんで?」
おれが聞きたい。お前、なんでそんな顔してんの?
「これ……なに?」
「あーなんか、生マシュマロ、とかいうやつだって……」
「……なんで私に?」
なんでって? バレンタインのお返しですけども……。
あれ? っていうか、もしかして。もらってないの? やっぱりあれバレンタイン関係無かったのか!?
うわ、だったらすげえバカみたいじゃねえか俺! なにやってんだ!
「え? え?」
慌ててどうしようか、なんかいい理由というか言い訳というか、そういうのがないかと考えていると、美咲がクスクスと笑い出す。
……美咲が、笑った。
美咲の笑った顔見るの、俺もしかして、初めてじゃねえ? こんな顔、見たことねえ。
っていうか、こんな顔してたっけ?
「冗談だよ。……お返し、ありがとう……」
「あ、いや……」
そう素直にお礼を言われると、なんだか居心地が悪い。
どう対応していいのかわかんねえ。
「じゃ」
「あ、ちょっと待って」
もうさっさと帰ろう。なんか調子が狂う。
そう思って背を向けると、美咲が慌てて俺を引き止めた。
「これ」
待っていると、笑顔で俺に小さな箱を渡してくる。
……なんなのお前、急に笑顔とか。ほんっと、調子が狂うんだけど。
で、なんだこれは。
開けるべきなのか悩んでから、ぐしゃぐしゃにしないように包み紙をあけた。前に渚からもらったとき、ぐしゃぐしゃにしたらすげえ怒られたからな。
「なにこれ。塩、キャラメル?」
塩ってなんなんだよ? キャラメルになんで塩?
「巽、甘いの苦手でしょ」
……そんなの、家族しか知らねえのに。なんで知ってんの。