嫌いな男 嫌いな女
っていうか。なんで俺がこんなもんもらってんだ。あまりモンとかそういうことか?
でも、俺が甘いのが苦手だからって……俺の分みたいな言い方。
ホワイトデーって男からするもんなんだろ?
「なんで俺に?」
俺の疑問に、美咲は、「ん」と、1枚の包み紙を見せた。
バスケットボールの柄が描かれてるオレンジのしわしわになった包み紙。見覚えのある……チョコレートの包み紙。
「これのお返し」
「……っあ、あ、それ、は」
恥ずかしい! ばれてんじゃねーか俺!! うわー死にてえ!
今すぐベッドにこもりたい!
あの日、バレンタインの日。悠斗に振られた美咲に投げつけたチョコレート。実際には渚に貰ったチョコレートなんだけど。
すぐに走って逃げたから見られてないと思っていたっていうのに……!
もしかして。もしかして。
俺が甘いのが苦手だっていうのも渚に聞いたんじゃないだろうか。もしかして、このチョコのことも渚知ってんじゃねえの?
あの意味深なニヤニヤ顔も、そのせいか!
うわーもうすげえ恥ずかしい。かっこわりい!
焦ってあわあわ言葉を発する俺に、美咲は微かに笑った。
「……ありがとう」
珍しい美咲からのお礼の言葉と、笑顔。
なんなんだよお前。いつもこんなんじゃねえじゃねえか。
「……じゃあな」
どうしていいかわからなくなって、お礼になんて返せばいいのかわからなくて、とりあえず部屋に戻る。
そういえば俺、お礼言ってねえな。
でも、今更言うのもなんかこっ恥ずかしいし……。