嫌いな男 嫌いな女

部屋にお父さんとお母さんが入ってきても顔をあげないまま、無言で丸くなったまま。荷物が届いても、隆太がちょっかいを出してきても全部無視。


そのうち瞼が重くなって、次に目を覚ましたときはもう外は真っ暗だった。
部屋の中にはいくつもの段ボールがあって、いつのまにか私の体には布団がかけられてある。

……どのくらい寝てたんだろう。


「あ、ねーちゃん起きたー?」


ぼーっとしていると、階段を駆け上がってきた隆太が部屋に入ってきて、「ご飯だってさー」といつもの口調で私の布団を剥ぎ取った。



階段を降りて、まだ片付けの終わってないリビングに入る。
それでも朝より物が増えていて、テレビも映っていた。ダイニングテーブルにはピザが並んでいる。


「あいつ嫌い……」


新しい家のご飯はなんだか変な感じだ。
それに加えてさっきまで寝ていたのもある。

それでも、ピザを頬張りながらぽつりと我慢できない気持ちをこぼすと、お父さんが苦笑を零した。


「まあまあ、そう言わずに」

「だって」

「照れてただけかもしれないじゃないかー」


そんなわけないじゃん。

お父さんのフォローに呆れてしまう。
今どきそんな男子いないし。

時間が経っても、寝ても、目が覚めて頭がはっきりしてきたって、あいつへのむかつきが収まらない。悔しいよりもムカつくほうが大きいくらいだ。

なんで泣いたんだろう私! もっと言い返せばよかった!


「一緒の学校になるとかイヤだな」

「もう! 仕方ないでしょ? 巽くんだって悪気があって間違ったわけじゃないんだから」

「でもオカマとか言われたんだよ! さいってー! ムカつく!」

「美咲も巽くんを殴ったじゃないの! 女の子が手を出すなんて。次会ったらちゃんと謝りなさいよ。そしたら巽くんもわかってくれるわよ」


そんなことでわかってくれるわけないし。
謝りたくないし。あいつが先に謝ってくれるならいいけど……。
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