嫌いな男 嫌いな女

私の叫びに巽はふふん、と鼻で笑うようにして大げさに私を見下ろす。


「今165センチ」


ぎゃあ! 私よりいつの間にか8センチもでかくなってる!?
なんで!? ちょっと前まで私より低かったはずなのに……!


「うそ! 絶対ウソ! インチキしたんじゃないの?」

「んなわけあるか」


必死な私に反して、巽は余裕の表情で返してくる。

私の悔しそうな顔に気づいたのか巽はまた笑って私の頭にぽんっと手をのせた。


「チビ」


ああああああああくやしいいい……!!

反論できない私を見て楽しそうに笑う巽をみて、ぎりぎりと奥歯を噛むしかできない。

屈辱だ、屈辱すぎる! あのチビに抜かれるなんて!

精神年齢は小学時代からなに一つあがってないくせに図体ばっかりでかくなって! なんでだ! いつから急に伸びたんだ!


「で? どうしたの? なにか騒いでたけど?」


巽の隣にいた悠斗くんが私に優しく声をかけてた。
そしてその隣には明宏くんもいる。


「や、あの、その、由美子が」


あれ、これ言っていいのかな。
秘密にしてたら言わないほうがいいのかな。

ちらりと由美子に視線を移すと、それに気づいた巽が「ああ」と納得したような声を出した。


「明宏と付き合ったんだろ? さっき聞いたけど」


知っていたのか。
私の隣の由美子が、明宏くんと目を合わせてはにかんだ。

……今までふたりが一緒にいるところを見たことがなかったけど、こうしてみるとなんだかすごくお似合いだなあ。明宏くんも背が高いし、由美子もスラっとしているし。


「……なんでそんなに冷静なの」

「は? だって前から仲よかったんだろ? 好きだって聞いてたし」


私知らなかったんですけど。
でも、そうかあーそんなに長い間、ふたりは仲がよかったのか……知らなかった自分がちょっとさみしいけど、そんな関係だったふたりが付き合ったのは、やっぱり嬉しい。

予鈴が鳴って、由美子と慌てて教室に向かいながら「おめでと」と言うと、とても幸せそうな顔をして由美子が笑った。

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