嫌いな男 嫌いな女



授業が終わって、クラスに戻る間に由美子が明宏くんの話をした。


「前からちょっと気になってて、バレンタインのチョコを渡してから、仲よくなってたんだよねえ。メールとか電話とか。何回か遊びに行ったり」

「そんなことしてたの! なにそれもう付き合ってたみたいなもんじゃない」

「まあ、そうなのかなーって思ってたら、告白、されたんだよねえ」


うわーなんだかすごいなあ。
だれかと付き合うなんて、まだまだ私には想像もできない。

……悠斗くんに告白したけど、付き合うとかってあんまり真剣に考えてなかったもんなあ……。


「ほら、巽くんの友達だから、なんか恥ずかしいのと、言いにくいってのがあってさ」


申し訳なさそうな顔をする由美子に、思わず笑みがこぼれた。


「そんなの気にしないでいいのに。でもまあ、先越された感じで悔しいけどー」


ふたり目を合わせて笑って歩いた。

そうかー恋人ってやつかあ。なんだか、一気に由美子が大人になった気分だなあ。


「どんなふうに告白されたの?」

「ほら、先週、私の誕生日だったじゃない。それで、プレゼントもらって」

「うわー明宏くんかっこいいことするねえー素敵! いいなあ、誕生日に告白なんて羨ましい!」

「で、実は来週明宏くんに誕生日なんだって。なにあげたらいいかなー」


誕生日かあ。付き合ってすぐに彼氏の誕生日なんてなにあげたらいいのかわかんないよねえ、きっと。でも、1年から仲よかったら知ってたりするのかなあ。

ただ、誕生日が近いなんて、それでもいいなあなんて思っちゃったりする。よくわかんないけど、運命みたいな。


「そういえば、巽くんも誕生日でしょ。一日違いなんだーって言ってたよ」

「ああ……そういえばそうだったかな」


ほんとは覚えているけど。
お母さんがいっつも巽の誕生日になんかしているらしいから。
< 74 / 255 >

この作品をシェア

pagetop