嫌いな男 嫌いな女

「美咲なんかあげたりしてるの?」

「まっさか、するわけないじゃん。されたこともないし」

「じゃあ一緒に買いに行こうよ!」


……いや、なんで。
突然誕生日にプレゼントなんておかしいでしょ! ヤダよやだやだ。バレンタインにお菓子あげるのとはちょっと違うんだから。

無言で頭を左右に何度も振り続けたけれど、由美子はそれが見えないのか「週末行こう!」と勝手に予定を決めだしてしまった。


いや、ダメだよ!
そんなのおかしいじゃない! なんで急に!? ってなるもん。
巽もびっくりするし、あげるとかどんな顔して渡すの! 意味分かんないじゃない……!


無理! 無理だよ無理無理!





「……隆太、誕生日になにもらったら嬉しい?」


なんとなく、リビングでテレビゲームをしている隆太に聞いてみる。


「巽本人に聞けば?」


……生意気になりやがって……。
こっちを見向きもしない上に、巽のことも呼び捨てか。いつか私のことも呼び捨てにするんじゃないだろうか。


「ゲームでもあげとけば?」

「巽ゲームなんてすんの?」

「ねーちゃん、そんなこともしらねえの? 土日とかオレたまに巽ん家行ってゲームしてんだけど」


そうだったのか。
知らなかった。っていうかいつの間にそんなに巽と仲がよかったんだろう。知らなかっただけでずっと仲がよかったんだろうか。


「っていうか、巽に誕生日プレゼントすんの? 珍しい」

「別に、なんとなく聞いただけだし」

「はいはい」


うわ、信じてない! なんて適当な返事だ。

いや、本当に、あげるって決めたわけじゃないんだけど。
明宏くんへのプレゼントに悩んでる由美子になんかアドバイスできるかなーって……。巽だったらなにがほしいのかなーなんて。

ああいつがなにをほしがっているかなんて知らないもんな、私。
< 75 / 255 >

この作品をシェア

pagetop