嫌いな男 嫌いな女
私は巽のことなにも知らない。
ずっと隣に住んでるけど、それだけだ。会話だって、少ないし……。隆太と一緒にゲームをしているってことも今まで知らなかった。
ほんっと、なにも知らないや。
誕生日……か……。渚ちゃんに聞けばわかるかな……。でも、渚ちゃんも最近見かけないし、わざわざ連絡するのもなんだか、恥ずかしいし……。
っていうか!
別に巽にあげるわけじゃないって! なに考えてるの私!
……とはいえ、なんとなく気になって、生まれて初めてメンズ雑誌を買って眺めてしまう。
すごい背の高い男の人ばっかりで、巽って感じじゃないよなあ。
巽の私服って今どんなんなんだろう。好みもわかんないし、雑誌に乗っているのってなんでこう高いんだろう。
「……巽はバッシュ欲しがってたよ」
「巽くんはアクセサリーとかつけないの?」
机に座って眺めている私を見て、明宏くんと由美子が話をする。
付き合うことになってから、明宏くんはよく教室に来るようになった。それはいいんだけど、仲がよすぎて羨ましくてたまらないんですけど。
「なんで巽の名前が出てくるのよ」
「日曜日にさんざん探して“巽の好み知らない”って諦めたのは美咲じゃない」
「……そうだけど」
一緒に買物に行ったものの、どうしても買うことができなかった。
好みも知らなければ、私は巽の服のサイズも知らない。
なにがすきなのかも知らないし、今流行りのアイテムもわからない。
なんだか、勢いにまかせて巽のプレゼントを選んでいる自分がすごく恥ずかしくなって途中で買うのを諦めた。
なのにまだこうして探している。
本当にあげるのかどうか、自分でもよくわからないんだけど……。お小遣いも今あんまりないし。
でも、なんで、あげない!って決められないんだろう。