嫌いな男 嫌いな女
・
なんで、話したこともない女が俺の誕生日を知っているんだろう。
帰りに増えた荷物を下げながらそんなことを思った。
朝に学校に来れば、机の中にラッピングされたスポーツタオル。
昼休みに呼び出されてよくわかんねえ置物。
クラブに行く途中で呼び止められてリストバンド。
……なんでこいつら俺の誕生日を知ってるんだ。
しかも“誕生日おめでとう”っていうだけ。告白でもすりゃまあわかんねえでもねえけど。ただプレゼントとか、正直うれしくともなんともねえ。
そしてどれも俺にとってはいらない物だ。
趣味だって違うしほしい物でもない。押し付けられても困るんだけど。その場で断るのはなあと受け取ったとはいえ……。
「ただいま」
「おかえりー。巽人気もんじゃん。それ誕生日プレゼントでしょ?」
「渚にやるよ」
家に帰ると、渚が俺の荷物を覗き込みながらニヤニヤする。
なにが人気者だ。こんな荷物押し付けられるなら人気なんていらねえよ。
「あんた最低ー」
「うるせえ」
「機嫌わるー。あ、わかった、美咲ちゃんにもらえなかったんでしょ」
「ばかじゃねえの」
投げつけた俺のプレゼントを手にして呆れる渚に舌打ちをする。
ほんっとしょうもないことしか言わねーんだから。
舌打ちが聞こえた渚は、仕返しのようにため息をついた。
「はいはい、あんたたちはもー。巽、着替えておいで。一時間くらいしたらお父さんも帰ってくるから、それからご飯よ」
「ケーキある!? ケーキ」
……なんで俺の誕生日ケーキを渚が楽しみにしてるんだ。
っていうか、俺ケーキもそんな好きじゃねえからいいけど。
晩御飯は多分肉だろうし、それはいいか。