嫌いな男 嫌いな女

着替えだけを洗濯機の中に放り込んで2階の自分の部屋に入る。
と、同時にコンコン、と窓が叩かれる音が聞こえた。


「巽……?」


美咲の声。
……あいつまた屋根を渡ったな。ほんっと女だと思えねえな。
っていうかなんの用事だよ。

正直今はだれにも、特に美咲に会いたくねえんだけど。でも無視するとうるさいことを言われるのも目に見えている。

一瞬聞こえないふりをしようかと思ったけど、前に来たときみたいに窓を叩かれまくっても迷惑だしな。

小さくため息を落としてから窓に近づいて開けると、美咲がしゃがみこんでいた。


「お前、こっから来るなって前も言っただろ。なんだよ」

「……なんで怒ってるの」

「お前が何回も同じことするからだろ」


俺の言葉に、美咲がふくれっ面をした。
なんだこいつ、うっすいTシャツにスカートなんて履いてんじゃねえか。

制服以外で見たことねえのに。なに色気づいてんだ気持ち悪い。


「用はなんだよ」

「…………ん」


んってなんだよ。うっとうしいな。用事があったから来たんだろうが。
言いたいことがあるならハッキリ言えばいいだろ。

むかついてきた。
悪いけど俺は今お前の暇つぶしに付き合えるほど暇じゃないんだけど。


「用事ないなら帰れ」

「……っな、んで。なにそんな機嫌悪いのよ。なにがあったか知らないけど八つ当たりしないでよバカ」

「お前がわけわかんねーからだろうが」


不機嫌な顔で俺を睨んでくるけど、美咲は帰ろうともしない。

窓の近くに三角座りをしてる。

なんなんだこいつは。
用事があるならさっさと言えよ時間がもったいねえだろ。


「あのな……」


そう、口にして気がついた。

こいつ、本当にバカだ。バカ女にも程がある。
自分がスカート履いてるってことに、気づいてないんだ。

スカートで、そんな場所で足を立てて座ってたら……見えるだろ……!
パンツが丸見えだっつーの、バカが!
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