嫌いな男 嫌いな女
「……帰れ」
「は?」
「さっさと帰れって言ってんだよ!」
ばっと背を向けて、美咲に言った。
お願いだから帰ってくれ。
見たくねえんだよそんなもん! 見せんなバカ!
……スカートだけじゃねえ。
上着だってうっすいTシャツで、胸元がすげえ開いてるやつ。かがんでいるから……俺の身長から胸が……見えそうなんだよ。
なんで急にそんな格好をして来るんだ。着るなら着るで、気を使えよ!
「似合わない服きてんじゃねーよ! なに? 悠斗とうまいこといきそうなわけ? もういってるのか?」
「……はあ?」
「だから急にそんな女みたいな服着たわけ? やめとけ似合わねえよ、お前には男の格好が一番だよ」
「なに、それ!」
美咲の声に、しぶしぶ振り返る。
口をぎゅうっと閉めて俺を力いっぱい睨む美咲の目と合った。
「よかったじゃねえか、悠斗と仲よくなれて。だったらもう俺に構うなよ。俺も最近は結構もてるんだ。お前と違ってかわいい女の子から誕生日プレゼントまでもらってよ。だからお前にうろちょろされたら迷惑なんだよ。さっさと帰れ」
ただただ、美咲に早く帰って欲しくて言った。
自分がなにを口走っているのかよくわかんねえけど、ひどいことを言っている自覚はある。
口を開けば開くほと、美咲の顔が歪んでいく。
だけど、止められない。
「あ、そう」
美咲の暗い重い……そして怖い低い声。
俯いて、ゆっくりと立ち上がる美咲に、思わず一歩下がってしまった。
……さすがに、言い過ぎた。
そら怒るだろう。確実に怒るだろう。めちゃくちゃ怒ってるだろう。
さすがに頭がザーッと冷えて冷静になってくる。えーっと、俺なんて言ったっけ?