嫌いな男 嫌いな女

『誕生日のデート』




私はクラブを引退してから、ちょっと遅くなったけれど塾に通い始めた。
巽は夏休み半ばまでクラブ活動をしていたから最後の試合はそこそこ勝ち進んだんだろう。

だからかどうかはわからないけれど、夏休みはほとんど顔を合わせることはなかった。

夏休みが終わってからも、廊下ですれ違うくらいで前以上に話すことは減った。
もちろん、巽の部屋に向いている窓を開けることは、あれ以来ない。

……まるで、ただの同級生みたいに。
ただ、顔を知っているだけの関係だ。

いっそこのまま、そんな関係になれたらいいのに、やっぱり家は隣でお母さんや隆太から話が出ることもあるし、由美子の彼氏、明宏くんの友達だから情報を耳にしてしまう。

だからなんだ。
こんなに憂鬱なきぶんなのは。


「美咲、まだ志望校決めてないの?」

「まだ決めてないの」


真っ白の進路希望表を眺めていると、由美子が驚いた顔をする。
もう8月も終わりだっていうのに……まだ全然決められない。

さすがに昨日の夜、お母さんにも怒られてしまった。

そもそも高校がありすぎると思う。公立でも10校くらいあるし、それに私立も合わせたらもう検討しようがない……。

学力で選ぶのはわかっているのだけれど、別にこれといってやりたいことも行きたいところもないと、選ぶには難しい。


「絞ってはいるんでしょ?」

「私立の女子校か、公立かって感じかな……」


どちらも偏差値は同じくらい。女子校のほうが少し高いかな。
家からの距離はほぼ同じ。最寄り駅はどちらも同じだし。駅から反対方向ってくらいしか変わらない。
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