嫌いな男 嫌いな女
「せっかくだし……今日一緒に帰らない? お祝いさせてよ」
「え? えーっと」
「好きな子の誕生日、祝いたいんだ」
……そんな台詞をさらっと言われると……断れないじゃない。
「じゃ、あ」
「やったー! じゃあ放課後迎えに来るよ!」
ぱあっと明るい顔を見せながら、そう言って大輔くんが去っていく。
あんなふうに喜ばれるのは悪い気がしないけれど……。
「美咲ってあんがい押しに弱いよねえ」
「……そういわないで……」
大輔くんに手を降っていると、後ろから由美子がため息混じりに呟いた。
本当に、自分でもこんなに弱いとは思わなかったよ……。
……告白されてからほぼ毎日朝私のクラスに顔を出す大輔くん。
たまに強引に一緒に帰ったりもしている。結構押しが強くて、正直ちょっと対応に困ってるんだけど、本人は全く気づいていない。
相手を知るために! なんて言われてしまうと断れないっていうのもあるんだけど。
知れば知るほど、好きとは違うような気がしてきてしまう。
なにかが違う気がする。好きになるとは思えない。いい人だなとは思うけれど、それはあくまで友達だったらの話だ。
付き合うとか、ちょっと考えられないんだよなあ……。
それを相手にどう伝えたらいいのかわからなくて、曖昧なままこんな関係。
いいのかなあ、とは思うんだけど……。
「迷惑ですって言えばいいのに」
「……迷惑ってほどでもないんだけど……すきすき言われるのが、困るかなあ……」
友達っていう感じでもないし。
もごもご言っていると、また由美子にため息をつかれてしまった。
わかってるんだけど、恋愛偏差値が低すぎてどうしていいのかわかんないんだものー。