嫌いな男 嫌いな女
「これ、買おうか?」
「あ、ううん、大丈夫」
欲しくないものをもらっても困るし。
ブルーのイヤリングを店員さんに渡そうとする大輔くんを止めて、外に出た。
数百円のヘアピンとかもあるし、ラッピングだけでもかわいいからこの店のなにかならいいかなって思ったけど……やっぱりいい。
そういうのは自分で買おう。
柄物の缶に入れてもらって、黒の紙袋に入れてもらって、紙の紐みたいなラフィアでリボンを結んでもらうんだ。
そういうのでいい。
自分に似合わなくても、自分がほしいのがいい。
「あの、私そろそろ、家でご飯もあるし……」
店を出て、少し歩いてから大輔くんのほうに振り返って言った。
あと、ちゃんと断ろう。
こんな気持ちで一緒にいるのも悪いし、私も、すっきりしなくちゃ。
「あ、うん、そうだね」
「あ、あと……」
「美咲ちゃん」
ちゃんと言おう、そう思ったとき、大輔くんに名前を呼ばれて顔を上げた。
その瞬間、ぐっと近づいてくる彼の顔。
——ああ、もう最悪だ。
行かなきゃよかった。断ればよかった。
もっと早く、ちゃんと言えばよかったんだ。
なんて、最悪な誕生日なんだろう。