嫌いな男 嫌いな女
渚の名前を言って手渡されたのは、ラッピングされたなにか。
てっきり服とかカバンとかかと思ったら、やけにキラキラした雑貨屋だ。俺でも名前を知っているような有名な雑貨屋。
……これ、どうみても誕生日プレゼントじゃね?
渚のことだから、もしかしてこれ、美咲に?
人への贈りもんなら自分で取りにこいよ、あいつ。
派手なピンクの紙袋をさげて、恥ずかしいけど明宏とファーストフードによって軽く食べてから家に向かった。
駅までの近道だと少し脇道に入ると、小さな店のショーウインドウが目に入る。
もうすぐ終わるんだろう。
店員らしき女の人が看板を中に入れようとしている。
2つ並んだネックレス。
……なんで、こんなものをみて美咲を思い出すんだろう。
ショーウインドウの奥にある棚の上にはイチゴのネックレス。でっかいのがひとつ。チェーンはちょっとアンティークっぽい雰囲気で、イチゴには石が入っていた。
こんなもん、美咲には絶対似合わねえ。
だけど、なんとなくあいつが好きそうだな。あいつ見かけによらず乙女趣味だからな。
自分に似合うものってのをわかってねーんだ、あいつは。
あいつがネックレスなんてそもそも似合わないけど、どっちかというと隣のシルバーのネックレスのほうがまだ付けられると思う。
でも……あいつはイチゴの方を選ぶんだろうな。
「巽?」
明宏が俺を呼んだ。