嫌いな男 嫌いな女
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「それ、美咲ちゃんに渡しといて」
「はあ!? なんで俺が! お前のもんだろ。自分で渡せよ」
「姉に向かってお前ッて言うなクソガキ。どーせあんた美咲ちゃんにプレゼントなんて用意してないんでしょ? 前にケンカしてからろくに話もしてないんでしょ? 優しいおねえさまがきっかけを与えてんのよ」
何様だこのクソババア……!
帰ってきて渡すなり、今からバイトだとか言って、俺に押し付けやがって……!!
余計なお世話だ!
っていうかなんでケンカのこと知ってんだお前。
「でもあんたからって言わないでよ、私からだから」
「じゃあ自分で渡せよ」
「だからバイトなんだって、あとで美咲ちゃんに連絡しておくし、別の日に一緒にお茶する約束もしてるから」
じゃあその日に渡せばいいだろうが。
「じゃ、よろしくー」
「ちょ、待てって! ……交換条件!」
「はあ!? なんなのよ」
俺の意見も聞かずにさっさと出かけようとする渚の肩を掴んで止めた。
美咲に渡すのはすげえ嫌だけど、俺の頼みを聞いてくれるなら、まあやってやらないこともねえ。
嫌だけどな。仕方ねえから渡してやってもいい。
俺の頼みを聞いて、渚は怪訝な顔をしたけれど、なんとなく察したのか、「貸すなら」と頷いてくれた。
……よし、このまま忘れたふりをし続けよう。